研究概要
1. 環境分析化学の研究:健康被害のある21世紀の有害重金属 (Pb, Cd, As, Cr, In)の環境対策

画像は日本分光株式会社HPより引用
鉛(Pb)とカドミウム(Cd)分析: Pbは胎児、乳幼児および児童において中枢神経の発達に影響の強い鉛の問題は過去のものではなく現代の社会問題であります。アレルギーの原因の一つであるといわれ低濃度暴露が懸念されるCdも迅速な分析が要求されます。世界の水資源の観点において地球環境問題として注目されている地下水ヒ素汚染、天然起源のヒ素汚染によって有効利用できなくなる井戸が世界の水を必要とする地域において深刻な問題です。国際貿易において有害物質が厳しき監視されています。日々、分析センターなどで管理分析業務が続いています。私たちの研究室では、鉛、カドミウム、ヒ素などの有害重金属の高感度分析法を開発して、英国化学会、アメリカ化学会、日本薬学会、日本分析化学会等が発刊している国際学術専門誌に論文として多数の研究成果を発表しています。
世界のTop 10%ジャーナルS. Imai, T. Nakahara: APPLIED SPECTROSCOPY REVIEWS, Vol.39, No.4, 509-532, 2004. (Taylor&Francis)
2. カーボンニュートラルを指向した固体触媒の設計・開発,表面物性研究,ナノレベル構造解析
固体酸触媒は,石油化学プロセス,有機合成など触媒が活躍する幅広い分野において重要な地位を占めており,現在も新触媒,新反応,均一系酸触媒の代替,評価法などの研究/開発が相次ぎ,バルクケミカルからファインケミカルまで欠かせないものとなっています.当研究グループでは無機化学的アプローチによる新規固体酸触媒の開発,バイオマス資源からの化成品合成触媒,表面物性評価およびその発現機構に関する研究を行っています.たとえば酸化ジルコニウム系複合酸化物,希土類酸化物,焦電結晶,貴金属ナノ粒子,規則性シリカメソ多孔体をはじめとした多孔質材料などを研究対象としています.また世界的に貴重な実験室系X線吸収分光分析装置(ラボXAFS),ポータブル分光分析装置を用いた基礎および応用研究も行っています.
3. 環境物質動態学の研究:解明が進む中国からのPM2.5(降雨、エアロゾル、降雪、樹氷)

WHOによると大気汚染が人類の寿命を3年短くしている。日本では、PM2.5の中国からの大気汚染物質の越境汚染による健康被害が懸念されています。現代は、呼吸器・循環器系に重篤なリスクを持つと言われる浮遊性微小粒子状物質(PM2.5)が社会問題になっています。未だに解明が不十分な発生源特定方法や長距離輸送機構を解明するために、石炭火力発電所の未処理排出物に特有に含まれる石炭フライアッシュ、石炭由来の重金属に的を絞って研究しています。既に無数の石炭フライアッシュが雪や樹氷によって大量に降下している事実を発見し、発生域を突き止めることに成功しました。